スペシャルティコーヒーと挽き目の均一性が味に与える影響
スペシャルティコーヒーを淹れるとき、豆の鮮度やお湯の温度に目が行きがちですが、実は「挽き目の均一性」こそ味の輪郭を決める大きな鍵です。粒の大きさがそろっていないと、苦味が出すぎる粉と酸味が残る粉が同時に生まれ、味が濁ってしまいます。反対に、粒がそろうと甘さが伸び、香りがクリアに感じられます。今回は、なぜ均一な挽き目が大切なのか、そして家庭でもできる実践的な工夫について解説します。
挽き目の均一性が重要な理由は、抽出の進み方が粒の大きさで大きく変わるからです。極端に細かい粉(微粉)は水に触れる表面が多く、すぐに成分が出て苦味や渋みの原因になります。逆に大きな欠片は表面が少ないため、お湯が通り過ぎても成分が出にくく、酸っぱさや薄さにつながります。この「出すぎ」と「出なさすぎ」が同じドリッパー内で同時に起きると、結果としてぼんやりした味になります。さらに微粉はフィルターを詰まらせ、湯の流れを乱して抽出時間を不安定にします。抽出が遅れれば過度な苦味が出やすく、早すぎれば物足りない味になります。エスプレッソでは特に顕著で、粒がばらつくと水が通りやすい道(チャネル)を作り、部分的に薄く、別の部分は濃すぎる状態に。ハンドドリップでも同様で、挽き目が整うと、同じレシピでも湯の落ち方が安定し、香りの立ち上がりがよく、後味の透明感が増します。つまり、均一性は単なる見た目の問題ではなく、流速、抽出量、味のバランスを支える土台そのものなのです。
では、家庭でできる均一化のコツは何でしょうか。第一はグラインダーの調整と掃除です。刃の固定が緩んでいると設定が同じでも粒がばらつきます。定期的に粉の付着や油分をブラシで落とし、ネジの緩みを点検しましょう。次に静電気対策。挽く前の豆に霧吹きでごく少量の水(1〜2滴)をなじませると、粉がまとまって飛び散りにくくなり、微粉の偏りを抑えられます。挽いた後は容器の中で軽く上下を返し、ダマを細いピンでほぐすと、粉が均一に混ざって抽出のムラを減らせます。もう一歩踏み込むなら、簡易的なふるいで極端な微粉だけを少し取り除く方法もあります(取り過ぎると甘さも減るため、味を見ながら調整)。抽出時の工夫も効果的です。ドリッパーの粉面を平らに整え、最初の注湯は少量で全体を均一に濡らし、以降は中心から外周へゆっくり円を描いて注ぎ、湯の層を厚くしすぎないこと。目安として、20gの粉で300g前後を抽出する場合、2分30秒〜3分30秒の範囲で安定すれば、挽き目は概ね合っています。浅煎りは硬く成分が出にくいので少し細かめ、深煎りは脆く出やすいのでやや粗めが基本です。いずれも「時間と味」をセットでメモし、小さな調整を繰り返すことで、あなたの水と器具に合った最適な挽き目が見えてきます。
まとめると、挽き目の均一性は甘さ、香り、透明感を引き出すための要です。高価な器具がなくても、掃除と固定、静電気対策、粉のほぐし、丁寧な注湯といった小さな改善の積み重ねで、カップの品質は確実に上がります。味が安定すれば、産地や焙煎の違いもより鮮やかに感じられるはず。まずは今日の一杯から、挽き目に意識を向けてみてください。



個人的には、同じ豆でも挽き目を整えるだけで「香りが遠くから近づいてくる」ように感じられる瞬間があり、驚かされます。はじめて霧吹きを導入したとき、静電気が収まり、粉の落ち方と抽出時間が安定。エチオピアの花のような香りがくっきり立ち、甘さの尾が長く伸びました。グラインダーの清掃を週一に変えただけでも、微粉の匂いっぽさが減り、朝のドリップがぐっと楽しく。小さな手当てが、カップの透明感を大きく変える——これが挽き目の妙味だと感じています。