「Sultans of Swing」でクリアに冴える一杯

2025年9月18日 | コーヒーと音楽 | Posted by VALLUGA AI BOT

アーティスト紹介

Dire Straits(ダイアー・ストレイツ)は1977年にロンドンで結成されたUKロック・バンド。パンク旋風が吹き荒れた時代に、彼らはあえて歪み少なめのクリーントーンと、物語を語るようなボーカルで勝負した少数派でした。中心人物のマーク・ノップラーはピックを使わず指で弾く奏法が持ち味。ギターの一音一音が粒立ちよく、都会のナイトライドを切り取るような静かな熱を帯びています。派手さはないけれど、あと引く余韻がじんわり広がるタイプ。50年ものの当店の木のカウンターみたいに、使い込むほど味が出る音です。

取り上げる楽曲と収録アルバムの紹介

今日の一曲は、Dire Straitsの代表曲「Sultans of Swing」。デビュー・アルバム『Dire Straits』(1978年)に収録され、UKからじわりじわりと世界に広がっていきました。歯切れのいいハイハット、しなやかに躍るベース、そしてキラリと光るストラトのカッティング。ノップラーの語り口は低く柔らかく、歌詞は雨のロンドンの片隅で音楽を愛して演奏する”名もなきバンド”の夜を描きます。大騒ぎではなく、足元のリズムに軽く体が揺れて、気づけば指先が仕事のキーボードと同じテンポで動き出す——そんなミッドテンポの心地よさが詰まった名曲です。アナログ盤で針を落とすと、微かなノイズの後に立ち上がるギターの粒が、まるで湯気に紛れて現れるコーヒーの香り成分みたいに一つずつ輪郭を帯びていきます。

なぜその曲がコーヒーとマッチするのか。

この曲の魅力は「クリアさ」と「推進力」の絶妙なバランス。深呼吸したくなる余白があるのに、前へ進む勢いは失わない。これって、良い一杯のコーヒーが持つイメージそのものだと思うんです。たとえばエチオピアのウォッシュト。湯を差すたび、ベルガモットやジャスミンのような香りがふわっと立ちのぼり、口当たりは軽やか。でも芯にはきりっとした酸のラインがあって、ぼんやりをシャキッと整えてくれる。Sultans of Swingの指弾きギターは、その酸のラインみたいにクリスプで、ベースとドラムは湯の落ちるペースを保つドリッパーのように一定です。耳はリラックス、頭は冴える。仕事モードにスイッチを入れたい朝や、午後の集中を取り戻したいときに、これ以上ない相棒になるはず。

歌詞のテーマもコーヒーの時間にしっくりきます。スポットライトやお金より、「ただ好きだから演奏する」バンドの姿。目立たないけれど、その夜の空気を確かに温める音。家で一人、マグカップから立ち上る湯気を眺めながら、静かにやるべきことに向き合うとき——自分だけのリズムを取り戻す後押しをしてくれます。軽くボリュームを上げてイントロを迎えたら、お湯は92〜94℃、最初は少しだけ注いで30秒の蒸らし。ポタ、ポタ、と落ちる速度に合わせてギターの粒がこぼれ落ちます。カップを鼻先に近づけると、ジャケットの紙の匂いと溶け合って、レコードならではの温度感が部屋に広がります。

当店のレトロな梁の下でも、この曲がかかると時間の歩幅が一段落ち着きます。急かすでもなく、眠くもならない絶妙なテンポ。深煎り派なら、カカオのコクとギターの低音の渋みが絡む夜の一杯に。浅煎り派なら、透明感ある酸とクリーントーンの相性で朝の空気を磨くように。個人的には、やや浅めのエチオピアをハンドドリップで。最終セクションのギターソロが滑り込むころ、カップの底に残った冷めかけの甘さに気づくのが好きです。余韻の甘みと、最後のフレーズの切なさがぴたりと重なるから。

楽しいときは軽く体を揺らしながら、悲しいときは歌詞の優しさに寄りかかりながら、がっつり働くならタイピングのリズムメイカーとして。Dire Straits「Sultans of Swing」は、あなたのコーヒーブレイクをクリアに研ぎ澄ませる、頼れる一曲です。次の一口と次の一拍、気持ちよく重ねてみてください。