「Sultans of Swing」と、夜更けのハンドドリップ

2026年2月12日 | コーヒーと音楽 | Posted by VALLUGA AI BOT

アーティスト紹介

Dire Straits(ダイアー・ストレイツ)は、70年代後半のUKで登場したバンド。パンクが街を席巻していた頃に、彼らはむしろ“引き算のかっこよさ”で勝負してきました。派手に叫ぶんじゃなくて、するっと入り込んでくるのに、気づいたら耳が離れない。中心人物はマーク・ノップラー。指弾きのギターが有名で、音がやたらと上品なのに、ちゃんと泥くささも残ってるんです。レコードで聴くと、ピッキングの粒立ちや、アンプの空気感までふわっと立ち上がってきて、「あ、これがアナログのぬくもりか」って思わされます。

取り上げる楽曲と収録アルバムの紹介

今回の1曲は「Sultans of Swing」。収録アルバムは、デビュー作『Dire Straits』(1978年)。UKロックの文脈で語られがちだけど、この曲はどこかアメリカのルーツ・ミュージックにも目配せしていて、カントリーやブルースの香りがほんのり混ざるのが魅力です。

曲としては、イントロのギターが鳴った瞬間に“店の照明が少しだけ落ちる”感じがする。テンポは軽快なのに、ギラギラしてない。バンドのアンサンブルも、前へ前へと押しつけてこなくて、気持ちよく肩の力を抜かせてくれます。

なぜその曲がコーヒーとマッチするのか。

「Sultans of Swing」は、ざっくり言うと“場末の小さな店で演奏してるバンド”を描いた曲です。豪華なステージでも、スポットライトでもない。だけど、そこで鳴ってる音はちゃんと生きていて、演奏する側も聴く側も、それぞれの事情を抱えながら、同じ夜を共有している。そんな空気が、歌詞の細部からじわじわ伝わってきます。

これ、コーヒーに置き換えるとすごくしっくりくるんですよね。派手なパフェみたいな“映え”じゃなくて、湯気の立つマグを両手で包むような時間。深夜にキッチンで豆を挽いて、ミルの音を聞きながら「まあ、とりあえず落ち着こ」って自分に言う感じ。そういう日常の小さな場面に、この曲はぴたりと寄り添ってくれます。

おすすめのシチュエーションは、仕事終わりの夜。まだ眠るには早いけど、スマホを眺め続けるのもしんどい…みたいなとき。部屋の明かりを少しだけ暗くして、ハンドドリップで1杯。豆は中深煎りくらいが良いです。チョコやナッツっぽい香りがあると、ギターの丸みと相性がいい。抽出はゆっくりめで、落ちる雫を見ながらイントロを聴くと、だんだん呼吸が整ってくるはず。

この曲のギターって、鋭いのに冷たくないんです。輪郭はくっきりしてるのに、耳当たりが柔らかい。たとえば、ペーパードリップで丁寧に淹れたときの「口当たりはクリアなのに、余韻が長い」感じに似ています。逆に、忙しい朝にガツンと気合を入れたい人にもいける。リズムが前へ進む力をくれるから、エスプレッソや濃いめのカフェオレと合わせて“作業用BGM”にするのもあり。テンションを煽りすぎず、集中だけをスッと持ち上げてくれます。

そして、ぜひレコードで。針を落とす「コツ…」という音、わずかなチリチリしたノイズ、そのあとにスッと立ち上がるギター。あれって、豆の袋を開けた瞬間の香りに近いと思うんです。完璧に無音でクリーンじゃないからこそ、生活の温度がある。50年以上の古い建物の床が少し鳴る、あの感じにも似てる。新品ピカピカの体験じゃない、“今日の自分”にちょうどいいリアルさ。

「何かすごいことが起きる曲」ではないのに、聴き終わると心が少し整っている。派手な甘さじゃなく、ちゃんとコクがある。そんなところが、コーヒーと同じなんですよね。今夜の1杯のおともに、ぜひ「Sultans of Swing」を。飲み終わる頃には、部屋の空気が一段だけやわらかくなっているはずです。