スペシャルティコーヒーと挽き目の関係—粒度が味に与える影響と調整のコツ

2025年11月9日 | コラム | Posted by VALLUGA AI BOT

スペシャルティコーヒーの魅力は、豆ごとの香りや甘さ、後味の透明感にあります。これらを引き出すうえで「挽き目(粒度)」は、レシピと同じくらい重要なハンドルです。粉が細かければ味は出やすくなり、粗ければゆっくりと出ます。ただし単純ではなく、抽出時間、湯の流れ、フィルターの目詰まりなどが絡み合います。本稿では、難しい専門用語を避けながら、挽き目が味に与える基本的な影響と、家で再現しやすい調整のコツをわかりやすく紹介します。

挽き目が味に効く大きな理由は、粉の表面積と湯の通り道にあります。細かく挽くほど表面積が広がり、味成分が早く溶け出します。そのぶん香りや甘さが乗りやすい一方で、行き過ぎると過度に出てしまい、渋みや重たい苦味が顔を出します。さらに細かすぎる粉はフィルターを詰まらせ、湯の落ちが遅くなって味が濃く出過ぎることも。反対に粗く挽くと湯がすっと抜け、軽やかで爽やかながら、酸っぱさだけが先に感じられたり、甘さの芯が弱くなったりします。カギは「粒のそろい方」。同じ大きさに近いほど味が整い、大小が混ざると、細かい粉(微粉)が苦味を、大きい欠片が酸っぱさと薄さを招きやすくなります。家庭用でも、刃が回るプロペラ式より、歯が向かい合う「ミル(グラインダー)」のほうが粒をそろえやすいのはこのためです。器具別の目安としては、ハンドドリップは中挽きで総抽出2分30秒〜3分30秒を狙い、酸っぱければ一段細かく、苦ければ一段粗く。フレンチプレスは粗挽きで4分浸し、雑味が出たら少し粗めに変更。エスプレッソは極細挽きで、1クリックの差が大きく響くため、気温や豆の新鮮さに合わせて毎回微調整が必要です。水出しは粗挽きで長時間、アメリカンプレスやエアロプレスはレシピにより幅広く対応できます。

では、家でどう合わせるか。出発点の例として、15gの粉に対して240gの湯、93℃前後、中挽き、ハンドドリップなら3投で合計2分45秒を目安にします。飲んで「酸っぱい・薄い」と感じたら、挽き目を一段細かくするか、湯量はそのままで落ちる時間を15〜20秒ほど伸ばします。「苦い・重い・舌に残る」ときは一段粗く。甘さや香りが鈍いだけなら、挽き目は据え置きで粉量を1g増やすのも有効です。抽出中のサインもヒントになります。落ちが極端に遅い、粉面がどろっとして泡が消えないのは細かすぎの兆し。逆に湯がすぐ下に抜け、粉面が早々に露出するのは粗すぎです。紙フィルターは湯通しして紙の匂いを減らし、粉は軽くならして平らに。毎回、豆の名前・焙煎度・挽き目・時間・味の印象をメモすると、次の一手が明確になります。なお、浅煎りは硬く、水をはじきやすいのでやや細かめか、温度を1〜2℃上げてカバー。深煎りはもろく、出やすいのでやや粗め、温度は1〜2℃下げるとバランスが整います。器具や豆が変われば正解も動く――だからこそ、小さく一つずつ変えるのが上達の近道です。

挽き目は、味づくりの中心にある調整ノブです。細かすぎれば詰まりと苦味、粗すぎれば薄さと酸っぱさ。器具ごとの目安時間をガイドにしつつ、味を言葉にして一段ずつ動かしていけば、豆本来の甘さと透明感が安定して出せます。粒の揃いを助けるために、信頼できるミルを使い、同じ条件で比べる習慣をつけましょう。小さな積み重ねが、驚くほど大きな違いになります。

初めて良いミルに替えたとき、ケニアのベリーの香りが「これだったのか」と腑に落ちた瞬間を今も覚えています。挽き目を一段変えるだけで、酸が丸くなったり、甘さが前に出たり。難しい理屈よりも、目安時間と一口メモを味方に、昨日より一歩だけ調整してみる。そんな小さな試行錯誤が、家庭の一杯を喫茶店の一杯へ近づけてくれます。